こんな記事が出ていました。無人書店だって!
客は、顔認証で入店する。さらに、ビッグデータから読者の読書習慣を判断し、好みに合わせて本を勧め、商品の識別、追跡技術と行動認識技術などを利用して来店者が本を購入するかどうかまで判断する。
「無人」とか「顔認証」というキーワード絡みの話は、もはやそこまで魅力を感じなくなってしまったのですが・・(・Α・)
どうやって好みに合わせて本を勧めてくれるのかが気になり行ってみることに。
※この記事の内容は執筆時点でのものです。移り変わりの激しい中国ですので、突然なくなったり場所や営業時間が変わったりしている可能性もあります。行かれる際は必ずご自身で存在と営業時間をお調べになってから行かれるようにしてください。
■中の様子と本の買い方
来ました。近未来感があり洗練された感じがする入口です。
「天猫未来店」とも書いてあるので、アリババさんがかかわっているんですね。
※天猫(Tmall)とは、アリババが運営しているECサイトのこと。
ちなみにこの書店は2004年から同じ場所にあった書店を新しくしたものだそうです。
下記URLにBefore→Afterの写真が載っておりました。こういうの楽しいから見ちゃいますね。(中国語読めなくても大丈夫です)
无人书店来了!驻守复旦南门14年的老书店,摇身一变魔都文青的下一个打卡点!_搜狐文化_搜狐网
さてー入ってみましょう。
ちょっと写真だとわかりにくいんですが、ドアを入るとその先にゲートがあります。
そこに設置されているスクリーンに表示されたQRコードをアリペイでスキャンすると中に入ることができます。
そのあとアリペイ上で、自分の顔を登録するなどの設定をちょいちょいします。(イメージ5タップくらい、約30秒で完了)
さあ店内を見てみましょう。
そんなに広くないのですが、きれいな感じ。ゆったりスペース設計。
結構日本の本もあります。
中国でも大人気の村上春樹の本とか。古事記を始めとした日本の古典。
日本の建築・設計の考え方に関する本などなど。
そして店内右手側には・・・!!
細長い本の小道が!なんかわくわくする!
なんだかかっこいいぞ。(すれ違いづらいけど)
アリババさんはこういうエンタメ性を大事にしているところが好きです。
ところで、どうやって本がレコメンドされるのかな?(きょろきょろ)
店員さんに聞いてみました。(「無人書店」と言いつつ店員さんはいます。)
たき「あの・・この本屋さんは『ビッグデータから本をおすすめしてくれる』ってニュースに書いてあったと思うんですが。どうやっておすすめしてくれるんですか?」
店員「あー・・・それはいつ始まるかわかりません。おすすめしてほしければ、今はwechatの公式アカウントから直接店員に質問して下さい~」
たき(そういうことではないんや!!!)
オープンしてから5回くらい行きましたが、2018年8月現在まだ始まっていないようです(´・ω・`)
中国あるあるの「公式発表で大ぶろしきを広げるも、現実との乖離が激しい」でした。
やはり現地に行かないとわからないですね。。。
ちなみに決済ですが、REIDタグ(見た目はシールのようなもの)が本についており、読み取りゲートの前に立つと自動的に決済が完了する方式です。
今までご紹介した無人店だと苏宁易购biu!と同じ形式です。
写真がやや分かりづらいのですが、本を持ってゲートの前に立つと、RFIDタグがセンサーで自動で読み取られ+カメラが顔を認証し、自動で会計が完了します。
ただこのゲートはよく不調になっております・・・。
5回くらい行ったのですが、すんなりいかないこともしばしば。
本来は何もしなくても、立って数秒待つだけで決済が完了するはずなのですが、ゲートに表示されているQRコードを再度読み取ってください、と店員さんに言われたことも数度ありました。
ただ個人的にはそういったトラブルにはあまり否定的にはとらえていません(`・ω・´)
このように多少不完全でもどんどんリリースしていくところは中国の良いところだなと思っています。
▼そんな内容を以前書きました。ご参考まで。
takiyori-china.hatenadiary.com
■アリババの「ニューリテール戦略」との関わりと親和性について考えたこと
本書店プロジェクトにかかわった方々の、開業時のコメントを読んでみると、
ニューリテール戦略を伝統的な書店業界にも適用していきたい旨が述べられています。
アリババさんのニューリテール戦略は、すごく簡単にいうと、「オンラインとオフラインの融合」なのですが、まさに本とは親和性が高いように感じます。
自分自身の本購入体験に即して考えると・・・
私はkindleの愛用者で、今はだいたいの本はkindleで買って読んでいます。
kindleの使い始めは、本をオンラインで買うことに割と抵抗があったものの、レコメンド&無料サンプルの閲覧があるため、今やオンラインのみで決断して割とすんなり買えるようになりました。
が、やはり、本は全体をぱらぱら見てから買いたいなーと思うことは多いし、ぶらぶら書店を歩いて回るのはとても楽しいです(`・ω・´)
▼中国の本の装丁すてきですね
以下に私が思う、オンライン / オフラインそれぞれで本を買う場合の、体験の良し悪しをまとめてみました。
オンラインで買う場合(kindle想定)
- 自分の読書傾向から本をレコメンドしてくれるので、自分に合ったものを見つけやすい。
- 「新たな出会い」は少なめ。今回は新たにこのテーマを買おう!という顕在的なニーズがないと次買わない、もしくは、レコメンドされた似た系統のものを買い続けてしまいやすい。
- 無料サンプルは読めるが冒頭部分だけなので、パラパラと全体を見て判断することはできない。
オフライン(本屋)で買う場合
- ぶらぶら見ていると新たな出会いがたくさんある。故に楽しい。
- 書店によるが、書店の空間自体が楽しい、心地よい、ということもある。(この書店や、蔦屋書店など)
- 気になる本があったら、ぱらぱら見て全体像をつかめる。
- その場でのレコメンドはないので、自分に合ったものを見つけるのはやや効率が悪い。
接点が多く、個人に合わせた体験を作りやすいオンラインと、
五感に訴えることによる心地よさや新しい出会いを創発しやすいオフライン。
どんどんデジタル化が進み、ECで買う時代になってきたとはいえ、リアルの本屋の果たす役割はなくならさそうだな、と思っています。
特に本のように商品数がむちゃくちゃ多く、かつ、ニーズが顕在化していない状態で検討されたり趣味関連だったりする商材は、ニューリテール戦略との親和性が高そうだなと感じます。
※例えばニーズが顕在化しており、ある程度使えれば何でも良いという生活で必要な消耗品のようなものは、オンラインで購入決断してしまいがちだと思うので)
※「何が親和性高そうか」の条件は、本を念頭に思いつきベースで書いていますが、思考実験として条件だししてみても面白いかもと思いました。笑
この本屋さんは、今はオンラインがうまく使えている感じはなく、「素敵でちょっと会計が便利な本屋」という感じですが、今後どんな感じでオンライン使って良い体験を作ってくれるのか、楽しみですね。
予想では、各コーナーに設置してあるディスプレイの前に行くと、カメラが顔認識してそのコーナーにあるその人に合った本をレコメンドしてくれる、とかかな・・・?
今日はそんな感じです!
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